次世代ワイヤレス通信では、現在の規格を大きく超える動作周波数と帯域幅が求められると予想されています。この中でRFフロントエンドモジュールは重要な役割を担っており、特に音響RFフィルターは高周波化に向けた最も難易度の高い要素の一つとなっています。従来の圧電膜設計では共振周波数上昇に限界があり、新しい高周波化アプローチが不可欠となっています。
周期的に分極反転されたAlScN圧電膜、いわゆるP3F構造は、有望な解決策を提供します。圧電膜内部で分極方向を交互に変化させることで、膜厚を薄くすることなく高次音響モードを励起できます。これにより、高性能RFフィルターに必要なQ値および結合係数を維持しながら、17〜18GHz帯に達する高周波動作が可能になります。
Evatecは現在、CLUSTERLINE® 200プラットフォーム上でAlNおよびAlScN薄膜の高精度な分極制御を実証しています。この成果が特に重要なのは、真空を破ることなく、ウェハを他装置へ搬送することなく、成膜中にその場(in situ)で分極切替を行っている点です。従来の統合型アプローチと比較して、これによりプロセス複雑性を低減し、全体製造コストを削減できます。
形成された膜の分極状態は、2つの補完的手法により検証されました。AlN膜ではKOHウェットエッチングによる極性依存エッチング挙動を確認し、さらに圧電応答顕微鏡(PFM)によって圧電ドメインとその配向を直接観察しました。単層圧電膜に加え、分極方向を交互に変えた二層積層膜の形成にも成功しており、現在デバイス評価が進行中です。
Evatecは、AlNおよびAlScNベース圧電薄膜分野で長年の経験を有しており、将来の無線通信技術を支えるため継続的にプロセス技術を拡張しています。分極制御AlScN膜は、次世代無線通信システム向けスケーラブルな高周波RFフィルター実現の重要な基盤技術となります。
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